困りました
機械である私に困るという感情はないのですが、
唯一の他者ともいえる冬羽がいなくなってしまったのは、損をするということです
従って、困ったという単語を用いてもいいでしょう
既に相手は私へ向けて動き出しており、ここが戦場となるのもそう遠くないでしょう
彼が巻き込まれなければいいと願い、実践するためにコンテナを開けます
戦闘が終わり、私は戦争というものが分からなくなりました
これまでの認識であれば、戦争というのは人を殺す、あるいは殺されるという行為です
しかし、それでは隊員さんたちの言葉に矛盾が生じます
彼らは死にたくないから、殺すのだと言っていました
ならば一方は虐殺者で、一方は防衛者だということになります
今日撃ちおとした戦闘機は、珍しく大破せずに残りました
破壊すべく照準を合わせれば、人の姿が見えました
近寄り、確認すれば、彼は、
「死にたくねえ、畜生」
と呟いて死にました
相手も、死にたくないから殺しているようです
ならば、この戦争は、一体何のために?
夜になると、ふらりと冬羽が戻ってきました
私は繋がるものが増えたという意味で、その事実を受け止めました
もしかすると人間の嬉しいという感情は、充足を表すのかもしれません
そして困るということは、目的を達することができない不足を示すのでしょうか
猫を撫でながら、そんなことをぼんやりと思いました
ええ、『判断した』のではなく、『思った』のです
今日も星がきれいです
それでは、本日の行動を終了いたします
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