本日の戦闘は苛烈を極めるものでした
相手の質が上がってきているのです。当然だと判断できるでしょう
私も左肩に被弾し、外部装甲は完全に破壊されました
ある隊員さんはそんな私を見て、本当に機械なのだという事実に驚いていました
帰りのジープで、ある隊員さんが、この焼け野原について話をしてくれました
焼け野原は元々町だったそうです
しかし戦闘に次ぐ戦闘、敗走に次ぐ敗走で、町は次第に原形をとどめなくなり、
ついには今の形になったということです
「無理やり考えるなら、これで戦場は出来上がったから、一般市民を巻き込むことはなくなった」
そう言って隊員さんは面を伏せました
結局、多くの民間人が巻き込まれたこと、隊員さんたちが死ぬのは変わらないのです
多くの死体を乗せたジープが到着すると、全員で作業に取り掛かりました
今日は数が多く、いくつかの車は、運転手以外は死体を運ぶことになったほどです
多くの隊員さんが死体に呼びかけたり、一方的に話すのは奇怪な光景でしたが、
バイトさんは、そうでもしないともたないからだと教えてくれました
黙祷の時間、誰もが黙って手を合わせ、あるいはじっと墓石代わりの銃を眺めていました
何故涙を流さないのか訊ねると、ある隊員さんは心がマヒしているからだと言いました
その表情は、眉を八の字にする、力ないものです。よいことではないのでしょう
しかし心というのは麻痺するものでしょうか?
私には、人の学習能力が、これは通常に起こりうることなのだ、と他人の死を定義づけ、
涙を流す必要性がなくなったためだと判断されます
つまるところ、他人の死に慣れたのではないかということです
夕食では、前線に元々あった基地の話を聞きました
今もいくつかは残っているそうですが、それも全て抜け殻になっているそうです
ここもまた、そうなるのでしょうか?
そうなった場合どうするか、その点を留意しつつ、本日の行動を終了いたします
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