バイトさんが挙動不審です
具体的には、突然奇声を上げる。会話中にスリープ状態に陥る
ため息をつく。怒声をこぼす。といったことがあげられます
隊員さんたちも彼の奇態には警戒しているようで、
今日の昼食はとても静かで、つつしまやかなものとなりました
バイトさんの症状には、周りが見えていないというものも追加されるかもしれません
過去の記録から推測するに、精神の病でしょう
気になることであるので、周りの方も迷惑しているということを含め、
バイトさんの部屋に行って話をすることにします
私の指摘に彼は一瞬驚いた顔をすると、額に手を当てて落ち込みました
それから頭に掌を乗せて、訥々と語り始めます
助手さんとバイトさんは、昔付き合っていたそうです
意味は、お互い好意をよせ、伴侶となるための前段階だということでよいと言いました
ただ、しばらくしてバイトさんがここに配属になると決定した時、
助手さんは彼を拒絶したそうです
バイトさんは、
「いつ死ぬかわからない相手とは結婚できないんだろうな」
と呟いていました
しかし昨日、バイトさんは助手さんに付き合いを求められたそうです
「こっぴどくフッておいて、こんな、いつ死ぬかわからない状況でやり直すんだとよ」
その笑みは、自嘲と呼ばれるものでした
彼は助手さんが、死を目の当たりにして恐怖を紛らわせたいだけだと言いました
ただ単に拠り所が欲しくなり、そこにたまたま彼がいたから、求められただけだそうです
しかし同時に、彼は自分を最低だと評し、
「なんでこんな嬉しいんだろうな」
と苦笑して、椅子の背もたれに両腕と頭を垂れました。洗濯物のようです
しかし、嬉しいならそれでいいのではないでしょうか
私はそう判断されるのですが、バイトさんは、
納得という行為はそんなに簡単なものじゃないと不貞腐れました
これは私と彼の差異から、感情が存在するための齟齬だと判断できます
彼は自分が拠り所にされることを指摘していましたが、
人が一緒にいようとする理由には、そういった面も見受けられると判断されます
私から見れば人は是弱でしかありません
従って、その弱さを埋め合わせるためにも、
誰かと一緒にいようと思うことは自然ではないのでしょうか
どうも処理系統が熱を持ってきているようです
オーバーヒートすると危険ですので、この処理を保存し、本日の行動を終了いたします
Copyright(c) 2010 YOSHITOMO UYAMA all rights reserved.