9月3日

BACK NEXT TOP



 昼食時、食堂で充電をしていると、助手さんに話しかけられました
「昨日は災難だったわね」
 とのことですが、私としては大量の情報を仕入れることができたので、
 無益だと判断することはできません
 
 彼女は私に一番近い席に座り、卵丼を食べ始めます
 いよいよお肉もなくなり、隊員さんたちの雰囲気は暗いです
 
 助手さんの意図を確かめるべく沈黙していると、
 彼女はまた、私が恋をできるか、という話を持ち出してきました
 相変わらず理解できないことですが、情報として取り入れるのは有益であるので、
 話を聴きます
 
 助手さんの持論は、機械にも魂はあるというものでした
 人間が電気信号により感情を得ているのであれば、
 同様の処理を行うことにより、機械もまた感情を持つことができるのではないか
 私のAIを作成したのは、助手さんと博士の二人なので、彼女はその機構を組み込んだそうです
 しかし、今の私を見たところによると、あまり成果はないのだろうか、と彼女は問いました
 
 私が感情を解析し、こういうときにはこの反応をする、と設定します
 しかしそれは疑似的なものであり、人の持つ感情とは異なっているものでしょう
 バイトさんや助手さんといった人間を分析する限り、感情を制御できているとは言えません
 ですから、私が感情を分析できたとしても、持ちうることは不可能でしょう
 
 そう言うと、彼女は私の知らない笑みを浮かべました(自嘲と言うそうです)
「私は最低ね」
 私が感情を手に入れれば、それは世界的に快挙となるそうです
 そしてそれを、彼女も喜ぶことができる
 ですが助手さんは今、私が感情を持ち得ないことに安堵しているのだそうです

 理由を問うても、教えてくれませんでした
 これは、私が感情を完全に分析できるようになった時、理解できるものでしょうか?
 この情報の優位性を高めに設定し、本日の行動を終了いたします


BACK NEXT TOP


Copyright(c) 2010 YOSHITOMO UYAMA all rights reserved.