9月2日

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 昨日は避けられていたのですが、
 今日は戦闘行動がないと知るなり、バイトさんは私を外へと連れ出しました
 これを拉致というのでしょうか?
 ちなみに彼は私を抱えるつもりだったようですが、
 金属の塊である私は相当な重量があるため、手を引くという方法に変更しました
 車に乗ってから意図を問うと、
「休日なんだから遊ぶに決まってるだろ」
 とアクセルを踏みました
 しかし今日は一般的には平日だと判断します
 
 町についてからの彼は、一言でいえば理解不能でした
 避難勧告が出ていて人がいないためか、彼は適当な店を見つけると、
 私に裏口を破壊するように指示しました
 登録されている情報ではしてはいけないことなので拒否すると、
 彼はじゃあ仕方がない、とグロックでカギを破壊し、侵入しました
 通報しようとすると、
「とっとと来い。俺は腹が減ってるんだ」
 そう言えば、隊員さんたちの朝食は作っていませんが、大丈夫でしょうか
 
 結局抵抗も通報はせずに、バイトさんについていくことにしました
 私たちが入ったのはパスタの店でしたが、コックはいません
 バイトさんはそのことに気づくと、仕方がないから、と自分で朝食を作りました
 私は食べられないので、彼の前に座って、食事の様子を眺めることにします
 すると、食べにくいと背中を向けられました
 
 それからの彼も自由奔放で、私は始終引き回されていました
 手を引かれ、知らない情報を大量に取り入れる
 途中熱量が規定値をオーバーしそうになったとき、彼は自販機を破壊して、
 出てきた缶を当てて私を冷やしてくれました
 
 最後にたどり着いたのは、基地から離れているものの、
 基地を一望できる小高い丘でした
 彼はそこを空に近く、いい風も吹くいい場所だと評しました
 そして私に振り返ると、
「お前は不思議な奴だよ」
 と笑い、その場に寝転がりました
 私たちは空が茜色に染まるまで、研究所の屋上にいた時のように、話し続けました
 もう、彼は以前のようなバイトさんでした
 
 基地に戻ると、バイトさんは隊員さんたちに引きずり込まれて、
 最後に叫び声だけが残っていました
 何があったのかわかりませんが、
 その音を最後の記憶として、私は本日の行動を終了いたします


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