9月1日

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 バイトさんの様子がおかしいように感じます
 いつもは話すことの多い彼ですが、今日はあまり話す機会がないのです
 どうやら意図的に避けられているようです
 助手さんに話を聞くと、彼女は眉根を寄せて、
「そういうこともあるんじゃない?」
 と答えてくれました
 つまり何も解決しませんでした
 
 昼食を終えると、バイトさんと一緒に食事をしていた方に、
 彼の様子について尋ねました
 その隊員さんたちによれば、バイトさんはいつも通りだそうです
 ですが、私が分析したことに違いはないと思ってくれたのでしょう、
 試しに色々と聞いてくれることになりました
 
 そして菜園で水をやっていると、バイトさんが通りがかるのを発見しました
 あちらは私に気づきませんでしたが、
 私は彼の様子をつぶさに観察します
 しかし身体情報はいつもと変わらず、平均値を保っています
 つまり彼はおかしくないということです
 導き出される答えは、彼は精神に支障をきたしているというものでした
 ですが、助手さんや隊員さんの話を聞く限り、そうは見受けられません
 おそらく私の成長には有益と判断し、バイトさんの部屋に行ってみることにします
 
 第一声は、何の真似だお前、でした
 どういうことかを尋ねると、彼は今日、色々な人たちに問い詰められたようです
 全員が口をそろえて、私に冷たく当たっていないか、とのことでした
 それからバイトさんは、何でいちいちそんなことを気にする、と尋ねられたので、
 あなたの態度は私の成長に有益だと判断した、と答えました
 すると彼は、
「お前の回路はどうなってるんだ……」
 と頭を抱えました
 推論を重ねてみれば、バイトさんの行動は不明と感じるところが多く、
 それを知ることは記憶領域を多く使用することができると判断できたためです
 単純に言葉をまとめれば、彼と一緒にいることは、有意義であるということ
 それを告げると、追い出されました
 
 やはりバイトさんは稀有な情報を私に与えてくれます
 今回追い出された理由も、私のデータにない行動ですから
 しかし情報の取得が容易、という利点が失われつつあるので、
 優先度は下げる必要があるかもしれません
 
 以上のことを登録し、私は本日の行動を終了いたします


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