今日は戦闘が終わると、バイトさんの部屋に寄っていくことになりました
彼の部屋は相変わらず煙草のにおいを蓄えており、それ以外は目につくモノのない部屋でした
以前と同じく、私はベッド、彼はデスクの椅子に逆向きに座ります
おそらく腕をクッションにする必要があるものの、顎を置くことができるのが楽なのでしょう
彼は、博士が研究所を出たことを教えてくれました
博士の成果物が全て戦争にのみ捧げられていたことが原因だろうとバイトさんは言いました
はじめは戦争を憎んでいても、度が過ぎれば分からなくなるものだそうです
博士はその後どうしているのかを尋ねましたが、消息は分からないとのことでした
戦争はモノの壊し合いだとバイトさんは言います
傷つけ、奪い合い、破壊する。負の感情の坩堝のようなものだと
その分、失わないと得られない、分からないものはたくさん手に入るそうです
命というものがどういったものかは言うに及ばず、
普段の何気ない暮らしというものが、どれだけ楽しいものだったかを教えてくれるそうです
博士も、そうやって何かを知ったから、
作りだすことをやめたんだろう、と彼は外を眺めていました
彼の発言を基に推論します
私は、彼らが失うようなモノを何一つ持ち得ていません
最初からゼロだということです
彼らはプラスがゼロに近づくことで、その差から何かを学ぶのでしょうが、
私は、戦争で失うものについては、常にゼロしかないのです
感情というものを持ち得ない私には、戦争はただの行為でしかありません
正も負もなく、処理の一環として、それはそこにあります
だから私は戦い続けるのでしょう
この処理を停止されるまで
そう結論を告げると、バイトさんは私を抱きしめてきました
私がいなくなるような気がした、というのが理由だそうですが、
現在の戦力差を考えれば、戦場で私が死ぬということはありません
その他、いくつかの理由を持ち出しましたが、彼が私を離すことはありませんでした
よく、わかりません
それでは、本日の行動を終了いたします
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