今日は八時にスクランブルがあり、また、出撃することになりました
現在時刻と、私の行動終了時刻を考慮した結果、電力切れの恐れがあったので、
急遽、背中に無骨なバッテリーを背負うことになりました
やや動作が遅くなることと、
関節部のパーツが摩耗しやすくなることが考慮点として挙げられますが、
戦場で行動停止するよりは被害が少ないでしょう
夕食を終えてから幾分か時間がたっていることもあり、
私は助手さんと一緒に握ったおにぎりを夜食として配ることになりました
その途中、ある隊員さんたちが私を呼びとめます
彼らは以前菜園で間引きを手伝ってくれた方々で、その時撮った写真が出来上がったそうです
やはり彼らもまた、写真のことをお守りだと言い、ポケットにしまっていました
もしそれが本当に彼らを守る加護となるのであればいいと判断しますが、
現実には彼らの気分を落ち着ける以外の役目は果たしていないでしょう
彼らの反応について登録や推論といった処理を行っていると、
隊員さんの一人が、私にも写真を手渡してくれました
数人の人型のうち、無表情なのは私だけです
判断しがたい状況でしたが、お礼を言い、私もまたポケットに写真を入れておくことにしました
彼らは私のことを天使のようだと評しましたが、天使はバッテリーではなく翼を背負うものです
その指摘に、彼らは愉快そうに笑みを重ねました
戦闘が終わり、全員そろって帰還することになりました
どういった効果があったのかは分かりませんが、本日の死者はゼロでした
今私は、ジープの荷台の上で日記を書いています
お守りというのは非科学的なものであり、根拠はありませんが、
まったくの無価値ではないのかもしれません
バッテリーの残量がわずかになってきたので、
後の処理はバイトさんに頼み、私は本日の行動を終了いたします
Copyright(c) 2010 YOSHITOMO UYAMA all rights reserved.