いつも通り戦闘を終え、助手さんらに整備をしてもらいました
戦闘行動があると各部品の摩耗が激しいため、部品の換装が多くなります
その分時間をかけて整備を終えると、
一緒にお茶でも飲んでゆっくりしない?
と助手さんに誘われました
私は機械人形なので食物を取り入れることはできませんが、
彼女と一緒にいることに支障はないので、食堂へ行くことにします
コーヒーを飲んで -お茶と言っていたのにコーヒーを飲んでいる辺り、
私は助手さんがよく分かりません- 一息してから、
彼女は私を、ずいぶん人間らしくなった、と評しました
私はそれを、私が人間というものに対する情報を収集し、
対人反応における行動基準に取り入れる分量が増えたということだと解釈しました
人間風に言うならば、相手の顔色をうかがうことに長けてきたということでしょう
しかしながら私に感情は存在しないので、現在は声音に抑揚がありません
おそらくそれを成し得るためには、相当量の情報が必要でしょう
処理に時間がかかってしまうことも予測できるので、
特に必要がない限り、書き換えを行うことはしない方がいい判断します
また、彼女は私が人間の表情を読み取れることについても指摘しましたが、
これはあくまで顔筋運動などといった表面上に現れるデータを解析し、
統計的に判断を下しているだけです
従って、私は『人間らしく』なれても、 決して『人間』にはなれません
彼女は苦笑を多く得ながら私と会話し、
けれど、たくさん情報が集まれば、恋をすることもできるかもね、それこそ、SF小説みたいに、
などとよく解らないことを言い出しました
私は確かに人間というものを分析していますが、
そう指示されない限りは人間を真似るつもりはありません
そもそも現在の私の作業と、それを行った助手さんのデータを引き出す限り、
私が人間の真似をすることは、作業効率の悪化を招くでしょう
しかし、存在目的として『人間に近づく』、というのは候補にしてもよいと仮定できます
データセットに『私の存在目的』というものを追加し、
配列の一つ目に『人になる』と書き込んで、本日の行動を終了いたします
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