8月25日

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 畑に水をまいていると、珍客が現れました
 と言っても、人間ではありません
 屋根の上でのんびりとあくびをしていたのは、黒猫です
 どうやら雄猫らしく、彼はしばらくこちらを見つめた後、流れるような動作で下りてきました
 そして私の足元に歩いてくると、一鳴きして、足を二度、前足で叩きます
 意図はわかりませんが、どこかへ行く気はないようでした
 
 館内に戻っても、猫は付いてきます
 さすがに食事、洗濯時に動物は衛生上よくないので外に追い出していましたが、
 それ以外のときは常に一緒に行動していました
 というより、離れようとしなかったのです。外に追い出しても、窓を叩くほどに
 廊下ですれ違う隊員さんたちは、首を傾げたり、大丈夫なのかと私に訊ねたりしてきました
 特に問題はないので、大丈夫だと頷いておきます
 
 部屋に戻ると、助手さんが何やら書類と向き合っていました
 ですが、私に、正確には黒猫に気づくと、彼女は手を止めて尋ねます
 ここでは飼えないけれど、どうするの、と
 どうやら先ほどの隊員さんたちへの反応は、判断ミスだったようです
 ひとまずバイトさんに聞いてみることになりましたが、猫なんぞ飼えるか、と却下されました

 結局猫は逃がすしかなくなったのですが、
 猫は私がドアを閉める直前に滑り込んできます
 動物ながらに昼間の行為から学習したのでしょう
 諦める気はないようなので、排除する必要性があります
 しかし拳銃を構えたところで、助手さんが止めに入ってきました
 出ていかないから、と理由を説明しましたが、彼女は納得してくれません
 仕方がないので、猫を殺さないように逃がすことにします
 彼はやっぱり、私の足元にまとわりついて離れません
 
 私は今菜園にいます
 こういった場所で日記を書くのは初めてです
 黒猫は、処理回数、発生熱量の甲斐もなく私の膝で眠っています
 することはないので、両手両足を投げ出して、
 半分ほどが基地に隠れてしまっている星空を眺めることにします
 猫が途中で起きて、どこかへ行くという可能性も残されているでしょうから
 
 猫はいなくなりません
 警戒レベルを上げ、菜園にて本日の行動を終了いたします


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