今日はスクランブルが一度ありましたが、滞りなく戦闘行動を終了し、帰還しました
そして長官への報告を終えると、彼は突然、博士について話そうと言いました
何の繋がりもない発言に、私は意図を問いますが、
彼は、一週間以上ここにいるんだ、気晴らしにはちょうどいい話題だろ、と告げます
しかし私は機械だから晴らすような気はありません、と言うと、彼は俺のだよ、と言って口端を吊り上げました
バイトさんの部屋に入るのは初めてです
博士と同じで煙草のにおいが染みついており、しかし博士の部屋以上に何もありませんでした
そもそも部屋が、デスクとベッドを置けば手狭に感じるものだというのもあるのでしょうが、
デスクにはハードスティールジャケット弾が一箱と、分解してあるAK-47が放り出されているだけです
私はベッドに座り、彼はデスクの椅子を引いて逆向きに座りました
背もたれを顎に乗せると、私が話をするのを待っているようなので、音声を発します
ほとんどの記録はバイトさん、あるいは助手さんにかかわるものだったので、彼も相槌を打っていました
しかし野菜の話は博士と二人でしたものです
彼は旬の野菜辞典を呼んでおり、休みが取れたら実家に戻って野菜でも育ててみようと言っていました
話が一区切りつくと、バイトさんは笑います
どうしたのかと尋ねると、彼は、博士の実家なんてものはもうないよ、と言いました
博士の生家は、戦争で跡形もなく吹き飛んでしまったのだと
だから博士はあの研究所に住み着いて働いているそうです
それからしばらくバイトさんとたわいもない、研究所での話をすると、彼は唐突に、私に命じました
曰く、菜園でもやれ、と
意味が分かりませんが、すでに苗はあるそうなので、
作るのに支障はないですから、そうすることにいたしましょう
いくつか資料を読み進め、本日の行動を終了いたします
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