8月5日

BACK NEXT TOP



 朝起きると、バイトさんに、博士と話をするように言いました
 昨日と同じく意図がないのであれば、博士が困るだろう、ということで、
 私は彼の意図を訊ねました
 今度はきちんと話してもらいたいことがある、
 彼はそう言って、私の造られた目的を教えてくれました

 私は、バイトさんたちの所属している場所に依頼されて、博士が作り上げたものだそうです
 従って明日は定期検査の日でありながら、私の引き渡しが行われるだとか
 言われるがままに博士に訊ねると、彼は驚いた顔で私を見返しました
 知っていたのかい、と問われますが、バイトさんに聞きました、と私は答えます
 博士は困ったものだ、と眉尻を下げ、問います
 お前は戦争に出ることをどう思う、と
 しかし私は戦争というものを知りません。そのことを告げると、
 ちょっと外に出ようか、
 博士は提案して、後についていくことになりました
 
 車に乗るのはこれで三度目です
 しかし、研究所を包含した森から外に出るのは初めてでした
 外の世界はデータとして持っているものそのままで、
 研究所は森の中にあって、森を出れば、町が広がっている
 それを越えたところに、瓦礫の山がありました
 壊れた家だったり、壊れた飛行機、壊れた車、壊れた銃、壊れた大砲、
 そして壊れた人間、多くの破損物がありました
 どうしてこのようなものがここにはあるのかを訊ねると、
 博士は苦笑して、意地のぶつかりあいがあったのだよ、と答えてくれました
 一般には、それが戦争と呼ばれているものだそうです
 つまり、戦争は壊すもののようです
 私たちはしばらく瓦礫の山を眺めてから、帰ることになりました
 
 帰路、ほとんど話すことはありませんでしたが、
 博士は私に、戦争についてどう思うかを訊ねました
 私は、まだ答えを出すには情報が足りないと答えました
 いつか情報が満ちれば答えを出すことができるかもしれませんが、
 博士の言うように、戦争が感情の産物であるとすれば、
 私は決して理解することができないでしょう
 
 博士は最後に、明日どうするかは、君が決めなさい、と言いました
 私はどうすべきなのか
 疑問を保留にしたまま、本日の行動を終了いたします
 
 
 もし私のような人間がいるとすれば「優柔不断」と言うのでしょうか?


BACK NEXT TOP


Copyright(c) 2010 YOSHITOMO UYAMA all rights reserved.