本日は非常に奇妙なことが起こりました
助手さんに言わせてみれば、アレが出た、
バイトさんに言わせてみれば、なんだGか、
博士に言わせてみれば、人類の敵だね、
だそうです
ゴキブリというのは、何故こうも人類に嫌悪されるのでしょうか
それが発生したのは、研究所の外部に位置しているゴミ捨て場だと推測されています
発見は、職員の一人が食堂で食事を終え、通路に出た直後だったようです
彼女が叫び声をあげ、多くの職員が駆けつけました
そこにいたのは、黒くて小さくて素早いものです
たまたま訓練の帰りと重なる時間だったため、私も発見することができました
皆が恐れるようなので私が手で捕まえようとすると、居合わせた職員の方全員が、
待てええええ!
と叫んで私に飛びかかり、押さえつけられました
予測できなかった行動のため、反応がやや遅れてしまったようです
全員を投げ飛ばした時には、その姿はもう存在していませんでした
私の行動を阻害した理由を訊ねると、そんなものを触るな、と声を合わせた返事がありました
どうやらゴキブリは衛生上よいとは言えないもののようです
二度目の発見は、何かの殴打音が原因でした
屋上からの帰りに破裂音にも似た音が連続して聞こえる部屋があったので、
私はその部屋をバイトさんと訪れました
ドアが開くと同時に、スリッパが見えました
私は即座にかわしたのですが、バイトさんは咄嗟の判断ができず、顔面にスリッパを受けることになりました
直撃ではなく、かすめる程度だったのが逆に痛かったようです
それからバイトさんと助手さんは口論を始めました
助手さんもまた、ゴキブリは苦手だそうです
そう言えば私は本日より拳銃を携帯することを命じられたので、
即座に腰に提げたホルスターから取り出し、発砲しました
銃弾は命中し、ゴキブリは絶命しました
同時に、口論も収まります
バイトさんに教えてもらったことですが、
拳銃が一種の問題解決のための道具というのは、事実のようです
口論が終わったのが何よりの証拠です
二人は口をそろえて、拳銃でそれを殺す奴は初めて見た、と呟きました
私はどうやら、問題を解決するための練習をしているようです
また、人類共通に苦手なものがあるのだということを記録できました
それでは、本日の行動を終了いたします
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