7月30日

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 本日は一週間に一度の検査の日でした
 結果だけを端的に述べるのであれば、成長している、だそうです
 検査は前回と変わりがなかったのですが、
 出力周りの検査は基準値が厳しくなっているようでした
 
 今回は博士と軍服の方で、私の存在意義について議論することはなかったようです
 バイトさんは無表情で、これからの私の処遇について話をする二人を見つめていました
 話は、今度は実践訓練を行い、その結果次第で処遇を決定するというものに落ち着いたようです
 それから軍服の方は私に、拳銃を一丁投げてきました
 ダブルアクションの拳銃で、古い型であることが分かります
 カートリッジやセフティ、チェンバーがホットであるかを確認する
 トリガーには指をかけず、ひとまずその段階で手を止めると、拍手が上がりました
 私はその動作に一秒すらかけていませんでした
 軍服の方は喜び、バイトさんは驚き、博士は無表情で私を見つめていました
 このデータを登録されているということは、
 私はこの行為の関係する何かを求められて開発されたということになるのでしょう
 開発したのは博士のはずですが、
 その彼が何の反応もないというのは、どういうことでしょうか 

 あとはバイトさんと軍服の方が話していました
 バイトさんは、いつもと同じように落ち着いた態度でしたが、
 ひどく素っ気ない対応だったように思います
 話が終わってから訊ねると、
 別に友人というわけでもないし、仕事なんだからへらへら笑う必要はないさ、と苦笑されました
 
 本日はあまり研究所に活気があるとは言えませんでした
 明確には私の検査が終わってからです
 検査で結果が出ることは、研究成果と同一だと判断していたので、彼らの反応は私にとって未知のものです
 助手さんはこの現象を分析する私に、明日から射撃訓練などが追加されるから、と教えてくれました
 丁度よかったので彼女に、研究所の様子について訊ねると、
 みんな、あなたのことを気に入っているのよ、と肩をすくめていました
 バイトさんは居心地が悪いだろうけれど、ということを追加すると、
 彼女は明日から始まる訓練に関する書類を片付けに行きました
 
 少しずつ、私が作られた目的を導くのに必要な情報が提示され始めました
 同時に、分からなくなります
 何故、私が作られたとおりの動作をすることが、周りを悲しませることになるのでしょう
 理由は私が気に入られているから、というものだそうですが、やはり結論を下すには情報が足りません
 私はいつか分かるようになるのでしょうか

 そうなる必要はあるだろうと判断して、今日の行動を終了いたします


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