7月28日

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 今日は起動すると、博士が部屋を訪れました
 何でも私が起動するのを待っていたそうです
 目的を訊ねると、朝食を作ってほしいとのことでした。早速トーストを焼きます
 私も頭にプラグを突き刺し、彼が食事をするのを眺めていると、
 今日は外出しようということを持ちかけられました
 外に出ることを禁じていたのは博士です
 私は朝を、研究所の外出手続きとにより終えることになりました
 
 昼、私は初めて車というものに乗りました
 どのようなものであるかをデータとしては保持していますが、
 実際に乗るのはこれが初めてです
 また、外の世界を目にするのも初めてでした
 
 博士の目的地は研究所を取り囲む森をしばらく進んだところでした
 そこは研究所のあるような森でしたが、瓦礫の名残がありました
 建物からも蔦や木々が伸びているというのは、初めて目にする光景です
 博士の案内してくれたのは、徒歩でしばらく歩いたところにある湖でした
 私は初めて釣りというものを体験しました
 私のデータには意味しか登録されていないものです
 釣竿というものの扱いは難しく、竿のしなりで針を飛ばすそうです
 何度か練習して、ようやく針は着水しましたが、今度は魚がかかりませんでした
 博士が言うには、ここからは辛抱強く待つようです
 
 魚を待っている間には、とても多くのことを話しました
 博士の家族のこと、最近の仕事、趣味や特技、私の近況、
 本人にとっては当たり前、というべきものを沢山話しました
 その間も博士は魚を沢山釣りあげていました
 私は始め、引き上げる強さを誤って、魚をどこかへ飛ばしてしまいましたが、
 最終的には五匹ほどを吊り上げることができました
 魚は食べられるそうなので、持って帰って今日の夕食として振舞うことにします
 
 本日は記憶容量を使用するという意味でも、有意義な日であったことを記録して、
 私は今日の行動を終了いたします


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