7月25日

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 本日は大騒ぎでした。
 まず私の日記が他者に知れてしまったことが原因だといえます
 本来であれば博士にしか見せないものであり
 記述するのは常に人がいなくなった夜中ということもあるからです
 二つ目の原因としましては、昨日私がいろいろな人と知り合ったことでした
 知り合いというのはこの場合、道ですれ違う時に声を掛け合うものだと判断します
 そして今日は博士に日記を確認させてくれと言われたので
 自室にこもっている彼に日記を持っていくことになったのです
 従って、今朝バイトさんに朝食を作り、昨日のデータ整理を終えた私は博士の部屋に行ったのですが、
 どうも途中で日記を落としてしまったようなのです
 それが研究所の方々に知れたのですから、
 皆さんこぞって探してくれるということになりました
 
 昼からの研究所はとても賑やかでした
 職員をあげての日記探しというのは、実に奇妙な現象です
 特徴としてあげられるのは手帳のように縦長の、革の装丁がなされているということです
 サイズもあまり大きなものではないので、見つけるのは難しいと判断します
 ある人は私の歩いた通路をもう一度歩きました
 ある人は誰かが届け出ていないかということを考慮して、事務の落し物を確認しました
 ある人は転がったり、誰かの足に飛ばされてどこかの隙間に入ったのではと、
 部屋や通路の隅を探しまわっていました
 ある人は何故か天井をめぐっている通風ダクトを這いまわったり、
 ダウジングを用いて研究所を徘徊していました
 途中でそれらしきものが見つかると殴り合いが発生していたのは新しい疑問です
 私も記憶を再検索、あるいは自らの行動をリピートしてみましたが、それらしきものは見当たりませんでした
 機械も落し物をするということを博士が珍しがっていると、バイトさんが姿を見せました
 仕事の間に仮眠をとっていたようなのですが、用事があるとのことで起きてきたそうです
 何かと尋ね、彼に差し出されたのは私の日記でした
 拾われていたのであれば、見つかるはずもありません
 それはもう見つかっていたのですから
 
 その後、理由は分かりませんが、バイトさんが大勢の職員を相手に模擬戦を開始しました
 大声をあげて楽しそうだったので、私は博士に日記を見せるという目的を達成することにしました
 九日分を何度か行き来して、博士はいくつか私に注意しました
 本日の日記はそれを考慮したものになっていると判断されます
 
 結局今日は日記の捜索に一日を費やしてしまいました
 電力の消費も多いので、早めに行動を終了します


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