7月24日

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 今日、私は主に調査に赴きました。結局人の表情がどういうものなのか、それを分析することが難しかったためです。現在の認識としては、表情というのは感情を表すもので、それによって相手に、私は今どのような気分か、ということを伝えるものだとしています。

 朝食は和食にしようとしたのですが、今日は久しぶりにパンが食べたいという要望を受け入れ、トーストに目玉焼きを乗せたものにしました。朝食の作業を終えた私は、各研究室を見て回ることにしました。標本数は多い方が、分析を行う上で有効であるからです。一つ目の部屋では、私が訪れたことにとても驚かれました。しばらくお話をしたのですが、彼は吃音が多く、始終顔を真っ赤にしていました。熱でもあるのかもしれないと、掌の温度センサーで確かめましたが、平温でした。しかしそれを気に、彼は仕事があると言って部屋を出ていかれました。二つ目の部屋は休憩室で、数名の職員の方が談笑していました。休憩室といっても様々な機具が放り出されている場所に隙間を作ったような場所で、談笑できるスペース自体はさほど広くはありません。しかし機具の関係で天井が高いので、窮屈な印象はありませんでした。しばらくお話に混ぜてもらっていましたが、途中、長大な機具が倒れてきたので、私は即座にそれを受け流し、彼らに当たらない位置に落としたあと、連鎖して崩れていく機具の山をさばき、最も巨大なものは交差した二の腕で受け止めました。総重量は二トンほどであり、彼らが直撃を受けていればただでは済まなかったでしょう。それらを押し戻し、私は彼らに注意するように告げました。三つ目の部屋では作業をしてらっしゃる職員の方々がいたので、紅茶とスコーンを作って提供しました。とても喜んでいたようです。

 昼食はうどんでした。バイトさんは量が足りないと言ったので、二人分作りました。昼食を終え外に出て、館内を歩きまわっていると、とある部屋から急に出てきた人にぶつかりました。かなりの勢いだったので、衝撃は大きかったですが、受け流すことで被害は最小限にとどめることができました。また、職員の方を投げ飛ばすわけにもいかないので、その方を抱きとめる形になりました。どういった意図でこのような危険なことをしたのかを胸に抱きよせて訊ねると、彼は、そうか、と呟かれ、私の腕を解きました。それから、新しい出会いってあるんだね、と言って、その方は走り去っていきました。結局何も分かりません。部屋を出てきた職員の方に訊ねても、タイプじゃなかったから、とだけ言って、去っていかれました。

 夕食はかに玉とご飯、そして中華スープでした。バイトの方に教えてもらったのですが、今日一日で私はとても有名になったそうです。研究所内では元々存在を知られていたはずなので、疑問ではあります。彼に訊ねたところによると、野郎どもがお前を気に入ったんだよ、と苦笑していました。何故男性ばかりなのか理由は分かりませんが、特に注意すべき動向ではないと判断しました。おそらくこの現象により、私やその他の方々が害されることはないと判断できるためです。夜はもう一度館内を散策し、女性の方を中心に話しました。やはり製作を行う場所では危険はあるので、倒れそうになった方を支えたり、研磨していた金属が割れて吹き飛んだ時には、職員の方を引き寄せる必要がありました。以上の行動により、記述していない点は多いですが、私は研究所の職員すべての照合と、データの補充を行うことができました。

 本日のデータは明日朝に整理することを決定し、私は活動を停止します。


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