7月17日

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 今日は私の誕生日です
 そう、彼が教えてくれました。彼というのは私を作った人のことで、皆からは先生、博士、と呼ばれています
 彼に私のことをいろいろ教えてもらいました
 私は人間という生き物とは違うこと、これからたくさん勉強をしなければいけないこと、この真白い建物を出てはいけないこと、それから、日記を書かないといけないこと、そういったことを沢山でした
 博士は、日記は私の勉強したことが分かるように、書かないといけないと言っていました
 けれど書く内容は、その日あったこと、その日思ったことを簡単に書くように、と指示されました
 だから、今日あったことを簡単に書きます
 まず、18時、私は起動しました。それから博士と、すぐ傍にいた女の人に、私の立場、すべきことを教わりました。立場としては、研究所の試験作品というものです。すべきことは、学習し、自分で考えて動くことができるようになれ、と言われました。まだこの言葉の意味を認識することはできません
 そして19時23分、私は部屋に案内され、そこで自分の姿を確認しました。場所は洗面所と呼ばれるところでした。そこには鏡が取り付けてあり、私はそろそろ二十歳になろうかという少女のようでした。髪は黒色で、肩の辺りまであり、服装は袖のあるワンピースが一枚でした。胸にはタグが付いており、私の製品番号が並んでいます。身体付きは細身で、顔の色は、博士たちより白いようでした。その様子を、私は観察していました
 20時11分に私は部屋の内部を確認しました。キッチンが北にあり、カウンターをはさんで食卓、リビングと並んでいます。リビングにはソファ二つとテーブルが並んでおり、テレビも完備してあります。ただ、私は食事も娯楽も必要ないと判断されます。これらが設置されている意図は不明です。
 21時03分に確認作業を終えました。明日は客人が来られるということなので、早めに活動を停止します。


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